これまで、PV用μMPPTやバッテリ充放電コントローラの電圧制御にはマイコンを利用してきた。電圧や電流の測定には抵抗を用いているが、温度に対してそれほどクリティカルに値が変わることはない。
一方、負荷用電源DCDCコンバータでは、コストダウンのために、CPUではなくトランジスタで電圧制御を実現している。最初は温度変化によって、それほど大きく出力電圧が影響をしないと安易に考えていた。
リビングのメイン照明に直流LED照明を利用し始めると、点灯時は明かるのだが、しばらくたつと焦土が落ちている状況に気づいた。利用しているパワーLEDは1モジュール10Wのもの。電圧27Vで370mAということだ。このモジュールは、電圧が多少低くても発光するが、流れる電流が大きく変化し、照度もそれに応じて大きく変化する。特に、25V~27Vあたりでは電流が倍程度も急激に変化する。
負荷用DCDCコンバータの出力電圧は、半固定抵抗で行うが、調整は20℃あたりの常温時に行っている。実際に設置すると、電流が流れ始めてDCDCコンバータ基板が暖かくなる。すると、出力電圧が23V付近まで低下していることが判明。
当初の出力電圧制御回路は、GNDと出力ライン間を抵抗で分圧し、トランジスタのベースに入れるという超簡易なもの。
トランジスタのベースが0.7Vを超えるとコレクタからエミッタに電流が流れることで負のフィードバック制御をかけている。こんな簡単な回路でもそこそこ安定した出力電圧を得ることができる。下側の抵抗を半固定にしておけば、抵抗値を変えることで設定電圧を変更することができる。
ところが、トランジスタのベース電圧の特性が変わったらどうだ。一般にベース電圧は2mV/℃変化するようだ。基板温度が20℃から70℃に上昇したとすると、0.7Vだったものが0.6Vになるということだ。実際に、それがどう出力電圧に影響するか計算してみよう。
0.7V:27V = R下Ω:(R下+R上)Ω
R上=47kΩとすると、R下=R上*0.7/(27-0.7)=1.25kΩ
上図では1kの半固定となっているが、これでは出力電圧を27Vにすることはできず、2kΩの半固定に変えて1.25kΩに調整することで実現できそうだ。
これが基板が温まりベース電圧が0.7Vから0.6Vに下がったらどうなるか計算してみよう。
0.6V:出力電圧V = 47kΩ:(1.25k+47k)Ω
出力電圧V=0.6*(1.25+47)/1.25=23.2V
27Vに設定した出力電圧がしばらく利用して基板温度が上がると出力電圧が23V程度まで低下してしまうということだ。これは、パワーLEDモジュールの特性から見ると大きく照度がダウンしてしまうということになる。これでは、照明機器の電源として少々お粗末にすぎる。温度が変化しても、出力電圧があまり変化しないように温度補償回路を設ける必要がある。
それでは、どうやって温度補償回路を構成するか。次回に検討してみよう。